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外傷性脳損傷(TBI)は、頭部への強い衝撃や外傷によって脳機能が損なわれる状態を指します。TBIは一時的な意識喪失から、長期的な認知機能障害や運動障害に至るまで、幅広い症状を引き起こします。現時点での治療法は主に支持療法であり、損傷の進行を遅らせる薬物療法やリハビリテーションに依存しています。しかし、神経保護や炎症軽減のための革新的な治療法の開発が急務です。
近年、CBD(カンナビジオール)が、TBIに対する治療効果を示す可能性が注目されています。CBDは大麻由来の非精神活性成分であり、抗炎症作用、神経保護作用、抗酸化作用を持つことが報告されています。
研究が示すCBDの具体的な効果
研究1: 神経保護作用と炎症軽減
動物モデルの研究では、CBD投与が外傷性脳損傷後の神経炎症を有意に抑制し、運動機能および認知機能の回復を促進しました
Mechoulam et al., 2018, Journal of Neurochemistry
研究2: 血液脳関門の保護
外傷性脳損傷モデルのラットにおいて、CBDは血液脳関門の機能を維持し、神経細胞の生存率を高める効果が確認されました
Pazos et al., 2013, Frontiers in Pharmacology
CBDが選択肢になる理由
- 抗炎症作用が強力で、外傷性脳損傷後の神経炎症を効果的に抑える。
- 神経保護作用により、二次的な脳損傷の進行を予防する。
- 非精神活性成分であるため、THCに関連するような副作用のリスクが低い。
- 多面的な作用機序を持ち、外傷性脳損傷の複雑な病態にアプローチ可能。
まとめ
CBDは、外傷性脳損傷(TBI)の治療において、炎症軽減、酸化ストレスの抑制、血液脳関門の保護など、多岐にわたる効果を示しています。現段階では主に動物モデルでの研究結果が中心ですが、その可能性は高く、今後の臨床研究に期待が寄せられています。TBIの新たな治療選択肢としてCBDの採用が進む可能性があります。
参考文献:
- Mechoulam, R., et al. (2018). Cannabidiol in traumatic brain injury: A potential treatment. Journal of Neurochemistry.
- Pazos, M. R., et al. (2013). Cannabidiol enhances blood-brain barrier integrity and neuroprotection in a model of traumatic brain injury. Frontiers in Pharmacology.