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パーム油は、私たちの日常生活において欠かせない存在となっています。食品、化粧品、洗剤など、多くの商品に使われているため、知らず知らずのうちに摂取している方も多いでしょう。
日本では一人当たり年間約5kgのパーム油が消費されています。
最近では「パーム油に発がん性があるのでは?」という声が聞かれることもあります。この記事では、パーム油の発がん性に関する真実と、パーム油が含まれる商品についてわかりやすく解説します。
パーム油とは?
パーム油は、アブラヤシの果実から抽出される植物油で、世界中で広く利用されています。その理由は、コストが安く、安定性が高く酸化しにくいからです。
パーム油がよく使われる理由
- 安価で大量生産が可能。
- 常温では固体、加熱すると液体になるため、マーガリンやお菓子などに最適。
- 酸化しにくく、長持ちするため食品の保存性が向上する。
これらの特性から、パーム油はさまざまな食品や商品に使われています。
パーム油と発がん性の関係:懸念される物質
パーム油自体に発がん性があると認定されたわけではありませんが、製造や加熱の過程で発がん性が疑われる物質が生成されることが指摘されています。
食品を通じた 3-MCPDE や GE の摂取による人の健康への影響について、国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO 合同食品添加物専門家委員会(JECFA)が2016 年に評価し、精製油や乳児用調製乳中の 3-MCPDE や GE の低減のための努力を継続することを推奨しました。乳児用調製乳が挙げられているのは、将来を担うと期待されている乳幼児の健康を保護することの重要性と、乳幼児の体重あたりの食品消費量が一般的に他の世代よりも多いことが、国際的に認識されているためです。
グリシドール脂肪酸エステル(GEs)
- 生成過程:パーム油の精製時、特に高温(200℃以上)での加熱処理により生成されます。
- 問題点:体内で分解されると、グリシドールという物質が発生し、これは遺伝毒性があり、発がん性が指摘されています。
- 評価:欧州食品安全機関(EFSA)はGEsを発がん性物質とみなし、その摂取量に注意するよう警告しています。
3-モノクロロプロパンジオール(3-MCPD)
- 生成過程:精製過程や高温加熱の際に生成されます。
- 問題点:3-MCPDは動物実験において腎臓障害や発がん性が確認されており、国際がん研究機関(IARC)では「グループ2B(ヒトに対して発がん性の可能性がある)」に分類されています。
パーム油が使われている商品は?
パーム油は非常に安価で使いやすいため、私たちが日常的に使う多くの商品に含まれています。原材料表記では「植物油脂」と表記されており、驚くことに、スーパーやコンビニで手に取る商品の多くにパーム油が含まれている可能性があります。大半がインスタントラーメンとスナック菓子で使用されています。
1. 食品
- スナック菓子:ポテトチップス、クッキー、ドーナツ
- インスタント食品:インスタントラーメン、カップ麺
- 加工食品:冷凍食品、揚げ物、カレールー
- パンやお菓子:マーガリン、チョコレート、ケーキ、パン
- ファストフード:フライドポテト、揚げ油に使用されることが多い。
2. 化粧品・日用品
- 石鹸や洗剤:泡立ちが良く、原料として使用されます。
- 化粧品:リップクリーム、スキンケア製品、シャンプーなど。
参考文献:
- 欧州食品安全機関(EFSA)
- 国際がん研究機関(IARC)
- WHO/FAO食品添加物専門家会議(JECFA)
- 農林水産省「食品中の 3-MCPD 脂肪酸エステル類 及びグリシドール脂肪酸エステル類 低減のための手引き」