目次
男性:罹りやすいがんの傾向と背景
- 前立腺がん
- 傾向: 日本人男性で最も罹患数が多いがんで、ここ数十年で急増しています。
- 背景: 高齢化が進む中で、前立腺がんの発生リスクが高齢とともに増加するため。PSA検査(前立腺特異抗原検査)の普及によって早期発見が増えたことも影響しています。西洋化した食生活(特に脂肪の多い食事)がリスク要因とも言われています。
- 大腸がん
- 傾向: 男女ともに罹患数が多く、食生活の変化と密接に関連して増加しています。
- 背景: 高脂肪・低繊維の食事、運動不足、肥満などがリスク要因とされます。日本の食文化が欧米化し、肉や乳製品の消費が増えたことが影響していると考えられています。
- 胃がん
- 傾向: かつては日本人男性で最も多いがんでしたが、罹患数は減少傾向にあります。
- 背景: ヘリコバクター・ピロリ菌感染が大きな原因。感染率は減少しているものの、感染者が多い世代がまだがん年齢に達しているため一定数は続いています。塩分の多い食事(塩辛や漬物など)の摂取もリスクとされていますが、食生活の改善で減少していると考えられます。
- 肺がん
- 傾向: 罹患数が増加していますが、喫煙率の減少に伴い一部のタイプでは罹患率が鈍化しています。
- 背景: 喫煙が主な原因ですが、非喫煙者でもリスクがある肺腺がんが増加しています。大気汚染や受動喫煙も影響しています。
男性のがん罹患数(2023年推計):
女性:罹りやすいがんの傾向と背景
- 乳がん
- 傾向: 女性が最も罹りやすいがんで、罹患数は増加傾向にあります。
- 背景: 出産年齢の高齢化や未婚率の上昇、授乳期間の短縮などがリスク要因。これらはエストロゲンの暴露期間の長さと関連しています。検診受診率が高まったことによる早期発見も増加に寄与しています。
- 大腸がん
- 傾向: 女性でも罹患数が増加傾向にあります。
- 背景: 男性と同様に、食生活の西洋化(高脂肪・低繊維食)、運動不足、肥満が関与しています。また、女性特有のホルモンの変化(閉経後のエストロゲン減少)が関係するという説もあります。
- 肺がん
- 傾向: 女性の肺がん罹患数も増加しています。
- 背景: 女性は非喫煙者であっても肺腺がんのリスクが高いことが分かっています。大気汚染や受動喫煙が要因とされるケースも多いです。
- 胃がん
- 傾向: 男性と同様に減少傾向ですが、一定数は罹患しています。
- 背景: 高齢者層ではピロリ菌感染や塩分摂取が影響しています。若年層では感染率が低いため、減少が目立っています。
- 子宮がん
- 傾向: 子宮頸がんと子宮体がんの2種類があります。子宮体がんは増加傾向にあります。
- 背景: 子宮体がんの増加は肥満やエストロゲン暴露の増加が要因とされています。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因です。
女性のがん罹患数(2023年推計):
国立がん研究センターが公表している「がんの統計2024 図表編」から、2023年の推計値を使用。
近年の癌罹患率の推移
近年の癌罹患者が増加傾向です。推計値では年間100万人を超えて来る可能性が高いようです。国立がん研究センターの「がんの統計2024 図表編」に基づいています。
- 実測値(2015年〜2020年):医療機関からの実際の報告データを基に集計した正確な数値。
- 推計値(2021年〜2023年):これまでの傾向や統計モデルを使用して予測された数値で、将来の罹患数を見積もったもの。
年次 | 総罹患数(例) | 男性罹患数(例) | 女性罹患数(例) |
---|---|---|---|
2015 | 891,445 | 510,926 | 380,519 |
2016 | 904,000 | 518,000 | 386,000 |
2017 | 914,000 | 523,000 | 391,000 |
2018 | 925,000 | 529,000 | 396,000 |
2019 | 936,000 | 535,000 | 401,000 |
2020 | 945,055 | 534,814 | 410,238 |
2021 | 960,000 | 543,000 | 417,000 |
2022 | 975,000 | 551,000 | 424,000 |
2023 | 1,034,000 | 589,200 | 444,600 |
8年で12万人(約16%)近い癌患者の新規罹患者が増える要因は何でしょうか?
癌は高齢化によって増えると言われます。国立がん研究センター「がんの統計2024 図表編」の調べでは新規癌患者の約7割が65歳以上だとされています。つまり、12万人×70%=約8.6万人(約10%)が65歳以上と推測されます。
65歳以上の高齢者のこの間の推移(総務省統計局)を見てみます。(以下表参照)約240万人(約7%)ほど高齢者は増えています。
つまり、高齢者が7%増加した事に対して高齢者の癌患者は10%増加したと推測されます。また、総人口は減少している一方で、癌患者が増加傾向です。
年次 | 総人口(万人) | 65歳以上人口(万人) | 高齢化率(%) |
---|---|---|---|
2015年 | 12,709 | 3,387 | 26.7 |
2016年 | 12,693 | 3,460 | 27.3 |
2017年 | 12,671 | 3,515 | 27.7 |
2018年 | 12,644 | 3,568 | 28.1 |
2019年 | 12,617 | 3,588 | 28.4 |
2020年 | 12,596 | 3,617 | 28.7 |
2021年 | 12,550 | 3,621 | 28.9 |
2022年 | 12,435 | 3,627 | 29.1 |
2023年 | 12,435 | 3,623 | 29.1 |
部位別の予測がん死亡者数(2023年)
死亡率の高い部位別の癌でみると肺がん、大腸がん、すい臓がん、胃がん等が男女共通で割合が多くなっています。
都道府県別の癌死亡率(2022年)
75歳未満の年齢調整死亡率(2022年)で比較した場合、全がん死亡率が低い上位5県は
男女計 長野県、滋賀県、山梨県、岡山県、三重県
男性 長野県、群馬県、滋賀県、山梨県、岡山県
女性 徳島県、滋賀県、長野県、大分県、三重県
がん死亡率が高い上位5県は
男女計 青森県、北海道、秋田県、宮崎県、岩手県
男性 青森県、高知県、北海道、秋田県、岩手県
女性 青森県、北海道、福島県、秋田県、宮崎県
である。全がん死亡率が高いこれらの都道府県は、主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の死亡率も高い傾向がある。