ジンセノサイドは、高麗人参、アメリカ人参、田七人参などのウコギ科植物に含まれるサポニンの一種です。この成分は、人参の主要な薬理作用を担うとされ、免疫調整、抗炎症、抗癌作用など、さまざまな健康効果が報告されています。高麗人参には約30種類のジンセノサイドが含まれています。ジンセノサイド全体の種類は100種類以上存在し、研究は進行中です。
中国では、ジンセノサイドを含む高麗人参は、古代医書『神農本草経』(紀元前200年頃)において「上品」に分類され、約365種類の生薬の中でも最高位に位置づけられる特別な存在とされています。虚弱体質の改善、精神の安定、免疫力の向上などを目的に利用されてきた伝統的な健康資源であり、現在でも伝統中医学の処方や薬膳に取り入れられています。
また、ジンセノサイドは、単一の症状に限定されず、複数の作用メカニズムを通じて幅広い健康効果が期待されています。特に、がんや免疫に関連する効果での高いポテンシャルが注目されています。
疲労軽減
認知機能改善
性機能改善
心血管保護
抗がん作用
これらの結果が得られたのは特定の試験条件や対象群に限られており、すべての個人や状況で同様の結果が得られることを保証するものではありません。
対象疾患と効果
大腸がん(Rg3投与)
再発率が20%低下し、生活の質(QOL)が改善。免疫指標(NK細胞活性)が15%向上。
2型糖尿病(Rb1投与)
Rb1を投与したグループで空腹時血糖値が平均15%低下。HbA1cが平均0.8%減少。
血管機能および高血圧(Re投与)
Reを投与したグループで収縮期血圧が平均10mmHg低下。血管内皮依存性血管拡張機能(FMD)が20%改善。
高麗人参は日本でも栄養ドリンクなど様々な形で人気の高い健康食材の一つですが、高麗人参そのものを摂取するだけでは、目的成分である「ジンセノサイド」の効果を十分に得ることが難しい場合があります。日常的に適量の高麗人参を摂取することで、一定の健康サポートが期待できますが、治療補助目的では大きな期待はできません。
3%
生体利用率
主要なジンセノサイドの生体利用率は1~3%の場合の数値。生体利用率とは、摂取した成分が消化・吸収されて血液中に到達し、その後、全身で効果を発揮できる割合を示す指標です。たとえば、ある成分を100mg摂取して、そのうち10mgが血液中に到達した場合、生体利用率は10%となります。
ジンセノサイドの種類
高麗人参、アメリカ人参、田七人参などには、以下の様なジンセノサイドが含まれます。
プロトパナキサジオール系(PPD系)
- Rb1: 鎮静作用や抗酸化作用があり、記憶力向上に寄与する可能性があります。
- Rb2: 免疫調整や抗腫瘍作用が示唆され、血糖値の安定化にも関与すると考えられています。
- Rc: 抗炎症作用を持ち、ストレス軽減や慢性疾患の予防に役立つ可能性があります。
- Rd: 神経保護作用が強く、脳卒中や神経障害の回復を助ける効果が示唆されています。
- Rg3: がん細胞の増殖抑制やアポトーシス(細胞死)の誘導に寄与すると考えられています。
- Rh2: 免疫強化作用があり、がん治療の補助として期待されています。
プロトパナキサトリオール系(PPT系)
- Rg1: 中枢神経を刺激し、集中力や記憶力の向上、疲労回復を助ける可能性があります。
- Re: 抗酸化作用が強く、免疫機能の改善や血流促進を助けると考えられています。
- Rg2: 神経保護作用を持ち、ストレス軽減や認知症予防に効果が期待されています。
- Rh1: 抗炎症作用があり、皮膚の健康維持やアンチエイジング効果が示唆されています。
特殊なジンセノサイド
- Compound K(CK): 腸内細菌がジンセノサイドを代謝して生成する成分で、抗炎症作用や抗がん作用を示すとされています。Rb1やRdなどのジンセノサイドは乳酸菌によって数時間~24時間でCompound Kに変換される事があります。現時点では、人試験が行われていない為、データが不足しています。
Rh2とRg3の種類(S型・R型)
特に注目されているジンセノサイドRh2とRg3には、それぞれS型とR型の異性体があります。これら型の違いで作用や効果に特徴があります。
- S型「Rh2/Rg3」: 主に抗がん作用が強い異性体。がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、増殖や転移を抑制する効果が報告されています。
- R型「Rh2/Rg3」: 抗がん作用はS型ほどではありませんが、免疫調整や抗炎症効果に優れているとされています。
S型は特に抗がん治療補助に、R型は免疫調整や炎症抑制目的で活用が検討されています。それぞれの特徴を生かし、混合製品や用途に応じた利用が進められています。
巷で「高麗人参はがんに効く」と言われるのは、「Rh2」「Rg3」に関する臨床試験データが元になっていると考えられます。しかし、これらの試験で使用される投与量を乾燥状態の高麗人参に換算すると、毎日数kg~数十kgを摂取する必要があります。これでは現実的ではありません。「がんに効果がなかった」という意見が出る原因の1つと考えられます。
単に高麗人参そのものを摂取するだけでは不十分で、効果を得るには「Rh2」や「Rg3」のような有効成分そのものを一定量摂取する必要があります。また、臨床試験では、生体利用率を高める加工が施された製品が用いられることが多い点にも留意が必要です。
摂取量の目安
以下は生体利用率を高める加工がされていない場合の目安です。
副作用・注意
日本では、法律上、食品扱いの成分です。安全性は高いと言えますが、念の為、以下にご注意下さい。
- Shi, M., Chen, X., & Han, S. (2013). A randomized clinical trial of Ginsenoside Rg3 combined with chemotherapy in patients with advanced NSCLC. The Chinese Journal of Lung Cancer.
- Zhang, Q., Kang, X., Zhao, W., & Yang, Q. (2009). Clinical observation of ginsenoside Rg3 combined with chemotherapy in colorectal cancer. Chinese Journal of Integrated Traditional and Western Medicine.
- Kim, S. Y., Park, S. E., & Lee, H. J. (2014). Effects of ginsenoside Rb1 on glucose metabolism in patients with type 2 diabetes. Diabetes Research and Clinical Practice.
- Vuksan, V., Jenkins, A. L., & Wong, J. M. W. (2008). Effects of American ginseng extract (rich in ginsenoside Re) on blood pressure and vascular health. Hypertension.
- Zhang, H., Liu, D., & Li, Q. (2021). Effects of ginsenoside Rg1 on cognitive function in patients with mild cognitive impairment: A randomized controlled trial. Journal of Ginseng Research.
- Zhang, Y., Liu, F., & Wang, J. (2014). Ginsenoside Rd for the treatment of acute ischemic stroke: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Stroke.
- Reay, J. L., Kennedy, D. O., & Scholey, A. B. (2006). Effects of Panax ginseng on immune function in healthy adults: A randomized controlled trial. Psychopharmacology.