食の安全規格

オーガニックについて

オーガニック(有機)とは、化学肥料や合成農薬、遺伝子組み換え技術を使用せず、自然環境に配慮して生産された農産物や食品のことを指します。動物由来の製品の場合は、動物福祉に基づいた飼育環境が求められます。各国には有機認証制度があり、日本では「有機JASマーク」がその基準を満たした製品に付与されます。

認証制度

有機JAS認証とは

有機JAS(Japanese Agricultural Standard)は、日本農林規格に基づき、農林水産省が定めた有機農産物および有機加工食品の認証制度です。有機農産物や加工食品が一定の基準を満たしていることを示すもので、有機JASマークを商品に付けるには、以下の条件を満たす必要があります。

認証基準の主なポイント

  • 化学農薬や化学肥料の不使用:原則として、収穫前2年以上にわたり化学農薬や化学肥料を使用しない。
  • 遺伝子組み換え技術の不使用:遺伝子組み換え作物や技術を使用していない。
  • 環境への配慮:土壌や水質を保全し、持続可能な農業を実施している。
  • 認証機関による審査:農場や加工場が第三者機関による審査を受け、基準を満たしていると認められること。

これらの条件をクリアした農産物や加工食品にのみ、有機JASマークを付けることが認められます。

有機JAS認証の対象と基準

認証可能なもの

  • 農産物(野菜、果物、穀物など)
  • 畜産物(有機飼料を使用している場合)
  • 加工食品(主原料が有機JAS基準を満たしていること)
  • 藻類(2022年から対象)

認証が難しいもの

  • 水産物(魚介類や養殖魚)
  • 野生食品(きのこなど自然環境で採取されたもの)
  • 輸入食品(原産国の認証基準と日本の互換性が必要)
  • 高純度の単体成分(ビタミンなど単一の成分のみを抽出)

有機栽培でも「有機」と表示できない農作物

日本の規制では、有機JAS認証を取得していない農作物や食品には、「有機」や「オーガニック」という表現を使用することが法律で禁止されています。たとえ実際に有機栽培で生産されたものであっても、認証を取得していない場合は「有機」として販売することはできません。

なぜ認証が必要なのか?

有機JAS認証制度は、消費者の混乱や誤解を防ぎ、不正な表示を抑制するために設けられています。有機JAS認証を取得している食品は、厳しい基準をクリアしていることが保証されているため、消費者が安心して購入できる仕組みを支えています。

認証を取得しない理由

一方で、認証を取得しない理由も存在します。

  • コストの負担:認証を取得するには審査費用や運営コストがかかります。小規模な農家にとっては、この費用が大きな負担になる場合があります。
  • 手続きの複雑さ:認証を取得するには詳細な記録や書類の提出が求められるため、手続きが煩雑であると感じる生産者もいます。
消費者への影響

有機JAS認証制度により、消費者は必ずしも「有機」と表示されていない食品が有機栽培で生産されているかどうかを知ることができません。そのため、直接生産者とコミュニケーションを取ったり、農場を訪問して確認することが信頼性を高める方法の一つです。また、認証を取得していない生産者が販売する食品についても、その背景を理解した上で判断することが重要です。

信頼性

有機JASは本当に安全か?

有機JAS認証は、農林水産省が公認する第三者機関による厳格な審査を経て付与されます。そのため、基本的には信頼性の高い基準とされています。しかし、以下の理由から、100%の信頼を置くのは難しい側面もあります。

不正の可能性

  • 虚偽申告:生産者や加工業者が不正を行い、基準を満たしていない農産物や食品を「有機」と偽るケースがあります。
  • 管理不足:認証機関や監査が不十分で、不正が見逃されるリスクがあります。
  • 混入リスク:輸送や加工過程で、非有機物質が混入する可能性。
  • 認証後の不正使用:有機JAS認証を取得した後で、基準を満たしていない農産物や加工品を有機として出荷するリスクがあります。このようなケースでは、認証機関の監査体制が不十分であると不正が見逃される可能性が高まります。また、流通過程でのチェックも十分でない場合、消費者が気づきにくい形で不正が行われることがあります。

監査体制の仕組み

  • 有機JAS認証の信頼性を維持するため、以下のような監査体制が導入されています:

    1. 定期的な現地審査:認証後も定期的に現地審査が行われ、基準が維持されているか確認します。この審査には農場や加工施設の訪問が含まれ、記録や設備が基準に合致しているかがチェックされます。
    2. 突発的な監査:不正のリスクを減らすため、事前通知なしで突発的な監査が行われることがあります。
    3. トレーサビリティの確保:生産から流通までの記録を詳細に追跡できる仕組みを設け、不正が発生した場合に即座に問題を特定できる体制を整えています。
    4. 違反時の厳しい処罰:不正が発覚した場合、認証の取り消しや行政指導、さらには罰金などの厳しい措置が取られます。これにより、不正行為の抑止力を高めています。

    これらの監査体制により、有機JAS認証後の基準維持が図られていますが、体制強化やさらなる監査の透明性が求められる声もあります。

食品残渣の使用リスク

有機栽培では、食品残渣(加工食品の廃棄物など)が肥料として使用される場合があります。この際、以下のようなリスクが考えられます:

  • 化学物質の混入:食品残渣に含まれる可能性のある食品添加物や化学薬品が、土壌を通じて作物に影響を与えるリスク。
  • 重金属の蓄積:食品残渣の原料に重金属が含まれていた場合、これが土壌に残留し、有機作物に取り込まれる可能性。
  • 管理不足の問題:食品残渣の出所や内容物の詳細が明確でない場合、適切な管理が行われず、基準違反となる可能性。

有機JASでは、食品残渣の使用に対して一定の基準を設けていますが、すべてのリスクを排除できるわけではありません。消費者としては、生産者がどのような肥料を使用しているかを確認することが重要です。

堆肥の使用リスク

  • 堆肥の基準
    日本では、有機栽培は「有機JAS規格」に基づいて行われます。この規格では、堆肥に使用される材料について以下の基準が設けられています:
    • 化学的に合成された肥料や農薬は使用しないこと。
    • 動物由来の原料(家畜糞尿など)を使用する場合、環境や健康への影響を配慮した管理が必要。
  • 堆肥原料のリスク 堆肥として利用される家畜糞尿が、ホルモン剤や抗生物質を投与された動物からのものである場合、その成分が堆肥に混入する可能性があります。具体的には:
    • 家畜に投与されたホルモン剤や抗生物質が排泄物に残る可能性。
    • 堆肥化の過程で一部が分解されるが、完全には分解されないこともある。
  • 混入リスクへの対応 有機JAS規格では、次のような制約や推奨が設けられています:
    • 有機認証を受けた牧場や飼料を使用した家畜の糞尿を優先的に利用すること。
    • 家畜の飼育において、ホルモン剤や抗生物質の使用を最小限に抑える努力がなされているかを確認すること。
  • 家畜由来の菌のリスク サルモネラ菌やO157大腸菌など非常に危険な菌が堆肥によって繁殖する可能性があり、生野菜などで食す際のリスクとなる。アメリカでは、大きな問題となっておりロメインレタスなどの有機葉物野菜やパック入りの葉物野菜を避ける傾向もあります。
現実的なリスクと考慮点

  • リスクの残存可能性
    堆肥に混入したホルモン剤や抗生物質の成分が作物に移行するリスクは非常に低いとされていますが、完全にゼロではありません。
  • 堆肥の品質確認が重要
    堆肥の原料となる家畜糞尿がどのような飼育環境で生産されたものかを確認することが重要です。現実的なところ、有機牧場自体が非常に少ない為、有機牧場のたい肥を使用しているケースは少ないと推測されます。

堆肥より、EU基準(重金属リスクが低い)を満たす化学肥料の方が安全性が高い可能性も十分にあります。

比較

何が一番安全か?

栽培方法による比較

項目 自然栽培 有機栽培 無農薬栽培 特別栽培
肥料 一切不使用(化学肥料・有機肥料ともに不可) 化学肥料は不使用
有機肥料(堆肥、動植物由来資材)のみ使用可
化学肥料および有機肥料ともに使用可能 化学肥料および有機肥料を
慣行栽培より50%以上削減
農薬 一切不使用 化学農薬は不使用
自然由来農薬のみ可
化学農薬は一切不使用 化学農薬を
慣行栽培より50%以上削減
認証制度 なし(独自基準による) 有機JAS認証が必要 なし
栽培者が自主的に実践
地域または農協の基準に基づく

各国の有機規格の比較

認証名 農薬の使用基準 肥料の使用基準 遺伝子組み換え(GMO) 動物福祉基準 検査の頻度
EU Organic
EU圏
化学農薬は禁止。
天然由来の農薬は厳しく管理。
化学肥料は禁止。
有機肥料は原料と製造プロセスを厳密管理。
禁止 放牧義務と飼料の有機基準を厳密管理。
動物の自然行動を最大限尊重。
年1回の現地検査とランダム監査。
USDA Organic
アメリカ
化学農薬は禁止。
天然由来の農薬は限定的に許可。
化学肥料は禁止。
動植物由来の有機肥料は許可。
禁止 自然環境での放牧が義務。
年1回の現地検査が必須。
有機JAS
日本
化学農薬は禁止。
天然由来の農薬は限定的に許可。
化学肥料は禁止。
動植物由来の有機肥料は許可。
禁止
放牧の義務はない。
年1回の現地検査が必須。
ACO
オーストラリア
化学農薬は禁止。
天然由来の農薬は限定的に許可。
化学肥料は禁止。
動植物由来の有機肥料は許可。
禁止 放牧を推奨。 年1回の現地検査が必須。

意外と知られていない有機大国「中国」

多くの人が「中国産=安全でない」という先入観を持つ一方、EUや米国のオーガニック規格は厳格であるため、「安全」と盲目的に信じられる傾向があります。しかし、実際には米国やEUの認証を受けた製品にも中国産の原料が含まれる場合が多く、独自調査で多くの原料が中国産であることが確認されています。

日本をはじめ、EUや米国など多くの国が中国産の有機原料を利用しており、中国企業も厳しい規制に対応する形で良質な原料を供給しています。輸入時には成分分析などの厳密なチェックが行われ、不適合品は排除されるため、供給者側も規則を守るインセンティブがあります。不正が発覚すると製品廃棄による大きな損失を被るためです。

中国産有機原料の多くは、サプリメントなどに使われる植物由来の抽出物で、見た目や味の品質が求められないため収量が多少減っても高価格で取引されるビジネスの魅力があります。また、中国は世界第4位の有機栽培面積を持ち、国内消費も富裕層の健康志向拡大により世界第3位の規模を誇ります。2023年には中国の有機食品の輸出額が約950億円に達し、製品価格ベースでは数千億円規模に及びます。

例えば、以下はiHerbでも有名なNOWフーズの原料に関するコメントです。(NOWフーズを推奨している訳ではありません)

NOWフーズ(1968年創業)CEO ジム・エメ氏

特定の国、例えば中国からの原材料を避けようとすると、ビタミンCや多くのB群ビタミンなど、世界の供給量のほぼすべてを排除することになります。これらには、食品強化に使用される全く同じビタミンも含まれており、それらは頻繁に中国の供給源から来ていて、私たちは日常的に包装食品で消費している可能性が高いです。それらを完全に避けることは現実的ではなく、また必要でもありません。最終的には、供給者がどこに所在しているかは重要ではなく、認定プロセスは同じです。当社は、高い専門知識を持つ人々による厳格な監査に依存して、供給者の能力と遵守状況を評価しています。その後、承認された供給者リストに追加する前に、品質システムの有効性をテストによって検証します。そのため、調達チームはそこから原材料を購入できます。当社の原材料は、原産国にかかわらず、品質と安全性のために徹底的に監視されており、どちらも妥協することはありません。

NOWフーズ(1968年創業)CEO ジム・エメ氏
「原料」と「製品」の安全性比較

日本では過去の食品偽装問題などから、中国産食品全般への信頼が低下しています。これらは通常、中国製造の”製品”です。製品の場合、1~90個目の製品と91~100個目の製品の中身が同じである保証はありません。100個中10個だけ不正に原料を安い原料にすり替える事で、製造者の利益が増えます。つまり、中国国内で製造された製品の場合、不正を見抜くことはほぼ不可能です。

一方で、原料の場合は、製造ロット毎に粉や液体の状態で容器に梱包されており、それらが輸入時の成分分析により安全性が確認されます。原料の場合、形状などから製品のような不正が難しいと言えます。国内事業者側が製造ロット毎に精密な成分分析をしっかりしていれば、非常に安全であるとも言えます。この様な背景からこの様な事から、「国内製造」という安全性アピールをする製品が多いのです。ただ、通常は製造ロット毎に原料の検査はしない事が多いと思いますので注意が必要です。

つまり、リスクが低い順でいうと以下の様になります。

  1. 原料の製造ロット毎に検査している国内製造の製品:最も安全
  2. 定期的に原料の検査を行っている国内製造の製品:比較的安全
  3. 海外製造の製品:安全性不明
成分分析の重要性

結局のところ、どこの国の原料・製品であっても、偽装や不正のリスクは完全には排除できません。そのため、安全性を確保するために最も重要なのが、第三者機関による成分分析です。

成分分析では、残留農薬や重金属など、微量でも人体に有害な物質の存在を精密に検出できます。国内でサプリメントや健康食品を製造する企業が輸入原料を使用する場合、必ず成分分析が行われていますが、分析の頻度項目は企業ごとに異なります。

通常、分析費用を抑えるために、最低限の分析項目や頻度で対応しているケースが多いと考えられます。これにより、全てのリスクを完全に網羅できているとは限りません。

消費者が製品の安全性を確認するためには、以下のポイントをチェックすることが重要です:

  1. 成分分析の項目: 残留農薬(項目数のチェック)、重金属、その他有害添加物などが含まれているかどうか。
  2. 成分分析の頻度: 定期的に行われているか、不足がないか。

これらを確認することで、安全性への信頼性を高めることができます。

各国のグリホサート残留値比較

オーガニックに関する情報ではありませんが、多くの消費者の印象と実情は違うというデータとして補足したいと思います。以下は ラウンドアップ訴訟 で有名なグリホサートの残留値に関する比較です。この表から分かる通り、中国は世界中に輸出が可能ですが、日本は多くの作物を中国に輸出は不可能の可能性があります。日本は2017年に残留値を引き上げ、アメリカとほぼ同様の基準値にしたことで、アメリカから日本への小麦などの輸出がしやすくなっています。国産小麦はグリホサートの使用が確認されていませんので、もし、使用がされていなければ、国産小麦が最も安全な可能性が高く、次に中国産小麦が安全という事になります。ここからも分かる通り、ビジネス的な側面で見ると中国は最も厳しいEU規制を基準にする事で世界中への輸出を可能としている事が分かります。EUは2033年にグリホサートの使用を全面禁止の予定です。

作物 日本(ppm) アメリカ(ppm) EU(ppm) 中国(ppm)
小麦 30 30 10 5
大豆 20 20 20 20
トウモロコシ 1 5 1 1
10 15 0.1 0.1
そば 30 30 0.1 0.2
ばれいしょ 0.5 0.5 0.1 0.1
りんご 0.2 0.2 0.1 0.05
ぶどう 0.2 0.2 0.05 0.05
トマト 0.2 0.2 0.05 0.05
茶葉 1 設定なし 0.1 1

PPM(parts per million)は、濃度や含有量を示す単位の一つで、「100万分の1」を意味します。1ppmは、1リットルの水に対して1ミリグラムの物質が含まれている状態に相当します。